2018.12.18
FRJプレスリリース:「難民に関するグローバル・コンパクト」が採択されました
2018年12月18日
特定非営利活動法人なんみんフォーラム
12月17日午前(ニューヨーク時間)、国連総会の本会議で「難民に関するグローバル・コンパクト」(GCR, Global Compact on Refugees)が採択されました。紛争や暴力、迫害などにより世界中で移動を余儀なくされる人の数は年々増加し、その数は2017年末時点で6,850万人にのぼっています。一方、難民のうち85%は発展途上国に避難をしており、特定の周辺国ばかりに負担が偏っているというのが現状です。GCRはこれらの問題への対応として策定された文書であり、日本を含む全ての国連加盟国が参加しているという点で非常に意義のあるものだと考えます。このリリースでは、GCRのポイントを提示するとともに、採択を受けて今後日本政府及び国際社会に期待することを示します。
経緯
2016年に国連総会にて開かれた「難民と移民に関する国連サミット」の成果文書である「ニューヨーク宣言」で、グローバル・コンパクトの策定が決まりました。2017年以降、ジュネーブにてGCRの具体的な内容についての議論が行われ、6回にわたる公式討議の後に2018年7月に最終文書が確定。第73回国連総会に提出された最終文書は、11月13日に第三委員会で採択(賛成176、反対1、棄権3)されました。それを受けて、12月17日の本会議において投票が実施され、米国に続いてハンガリーが反対票を投じたものの、181か国の圧倒的多数の賛成で採択されました(棄権:3か国)。
内容
GCRの主なポイントは以下の3点です。
1.目的について
GCRの目的として、以下の4点が挙げられています。
① 難民受け入れ国への圧力の緩和(ease pressures on host countries)
② 難民の自立の向上(enhance refugee self-reliance)
③ 第三国での受け入れへのアクセスの拡大(expand access to third country solutions)
④ 安全かつ尊厳ある帰還のための環境の整備(support conditions in countries of origin for return in safety and dignity)
①において受け入れ国、④において出身国への支援が強調されている点が特徴です。なお、これらの目標は a. 政治的意思の動員、b. 支援のための基盤の拡大、c. より公平・持続的・予測可能な各国及び関係するステークホルダーの貢献によって達成されるとされています。
2.グローバル難民フォーラム(GRF)の開催
難民受入の負担・責任分担のための具体策として、GRFの開催が決定されました。4年に1回、国連加盟国の閣僚級会合(さらにその中間年に、高級事務レベル会合)が開催され、上記の目標に向けた誓約や貢献を示すというものです。2019年12月の第一回GRFの開催に向けて、誓約や貢献がどのような形で示されるべきかや、それを評価するための指標についての議論が今後行われます。
3.「社会全体でのアプローチ(whole of society approach)」の導入
難民の受け入れに当たっては、国家だけではなく社会全体による責任の分担が必要だとされました。具体的なアクターとして挙げられたのは、人道・開発に関する組織や自治体、企業、市民社会や教育機関、スポーツ・文化活動などです。これまで以上に多様なアクターの参画により、留学生としての受け入れやプライベート(コミュニティ)・スポンサーシップ(民間主導による受け入れ)といった、難民問題の解決への新しい道が模索されることが期待されます。
意義と今後の展開
GRFでの誓約や貢献の発表に向けて、日本の難民保護政策にも変化が生まれることが期待されます。第三国定住の拡大はすでに報道されている通りですが、留学生含む受入れの拡充、難民認定状況の改善や、難民申請者の保護と自立の向上、それに関わるアクターの多様化なども具体的な貢献として挙げられるべきでしょう。
また、国際協調主義が減速する現代において、人道分野の文書がいわゆる先進国ばかりでなく、大量の難民を受け入れている各国の合意の下に策定されたこと(193の国連加盟国ののうち、180か国以上が賛成)も特筆されるべき点です。GCRには法的拘束力はありませんが、世界のほとんどの国が賛成した今回の「決議」に沿って、今後国際社会は新たな難民支援の指針として着実に履行していく責任を負ったと言えます。これはもちろん政府間だけの話ではなく、新たな「社会全体でのアプローチ」の一員として、日本に逃れてきた難民を支援する団体/NGOのネットワーク組織であるなんみんフォーラムとしても、政府・国会議員に加え、難民が暮らす自治体、雇用する企業や教育関係者等民間の多様な受入れ関係者、そして難民自身と連携し、難民がより安心して暮らせる社会を目指して引き続き活動を行ってまいります。
リンク
UNHCR, “States reach historic deal for refugees and commit to more effective, fairer response“
https://www.unhcr.org/news/press/2018/12/5c17642a4/states-reach-historic-deal-refugees-commit-effective-fairer-response.html, Accessed Dec. 17 2018
UNHCR, “Global compact on refugees (advance version),” https://www.unhcr.org/events/conferences/5b51fd587/advance-version-proposed-global-compact-refugees-20-july-2018.html, Accessed Dec. 10 2018.
UNHCR, “Global Trends 2017,” https://www.unhcr.org/statistics/unhcrstats/5b27be547/unhcr-global-trends-2017.html, Accessed Dec. 10 2018.
UNHCR, “Towards a global compact on refugees,”
https://www.unhcr.org/towards-a-global-compact-on-refugees.html, Accessed Dec. 10 2018.
時事通信「難民受け入れ拡大を検討」(2018年10月23日)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018102301133&g=soc、2018年12月10日閲覧。
以上
◼︎本リリースPDFはこちら
問い合わせ先
特定非営利活動法人なんみんフォーラム(FRJ)事務局
Tel: 03-6383-0688 / E-mail: info@frj.or.jp
FROM | なんみんフォーラム(FRJ)
2023.07.25
事務所移転・電話番号変更のお知らせ
NPO法人なんみんフォーラムは、下記の通り、事務所を移転しました。また、電話番号も変更しております。 ■ 主たる住所(郵送…
FROM | なんみんフォーラム(FRJ)
2024.11.17
「渡邉利三国際奨学金」2025年度奨学生募集開始
パスウェイズ・ジャパンは、渡邉利三国際奨学金の2025年度奨学生の募集を開始しました。 ▼渡邉利三国際奨学金2025年度…
FROM | パスウェイズ・ジャパン(PJ)
2024.11.17
11/30(土)全難連報告会&年次総会2024
改定入管法の「補完的保護対象者認定制度」等に係る部分が2023年12月に施行され、送還停止効の例外規定や監理措置制度、入管収容…
FROM | 全国難民弁護団連絡会議(JLNR)
2024.11.17
11/28(木)「グローバル インパクト ソーシング コンソーシアム(GISC)」発足シンポジウム〜インパクト ソーシングを活用したDX人材活躍の最前線
本シンポジウムは、「グローバル インパクト ソーシング コンソーシアム(GISC)」の発足に際し開催される、公開イベントです。G…
FROM | Welcome Japan(WJ)
2024.07.30
パスウェイズ・ジャパン シリア、アフガニスタン、ウクライナ学生受け入れのための日本語学校パスウェイズ 2025年度募集概要
Post title: "Pathways Japan Japanese Language School Pathways Program FY2025 application outline is published." English …
FROM | パスウェイズ・ジャパン(PJ)
2024.07.18
パスウェイズ・ジャパン 就活メンターシップ・プログラム参加者募集中
パスウェイズ・ジャパンが難民の背景を持つ人(シリア、アフガニスタン、ウクライナ、ミャンマー出身者対象)に向けて実施する就…
FROM | パスウェイズ・ジャパン(PJ)
2024.07.18
世界難民の日のイベントレポート(2024年)
6月20日は、2000年12月4日に国連総会で定められた「世界難民の日」です。この日に向け、難民となった人々やその取り巻く状況につ…
FROM |
2024.07.16
7/16(火)開催:世界難民の日アイデアソン2024 報告ウェビナー
WELgeeが「世界難民の日(6月20日)」によせて開催した「世界難民の日アイデアソン2024『本気で考える『ビジネスと人権』 〜 難…
FROM | WELgee
2024.07.12
2024年 第1回「Cultural Diversity Index」の認証エントリー開始のご案内
認定NPO法人Living in Peaceが認証委員会を務める、2024年 第1回「Cultural Diversity Index(カルチュアル・ダイバーシティ・イ…
FROM | Living in Peace
2024.07.09
「国際祭フェスティバル2024 in 米沢」開催のご案内
2024年7月22日(月)から29日(月)に山形県米沢市で「国際祭フェスティバル in 米沢」が開催されます。日本国内に住むミャンマ…
FROM | Welcome Japan(WJ)
2024.07.09
UNHCR難民高等教育プログラム:2025年度募集開始
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の高等教育プログラムの2025年度の募集が開始されました。 ーUNHCR難民高等教育プログラム…
FROM | 国連UNHCR協会