2014.06.19
難民保護法検討のための論点整理
衆議院では、2011年(平成23年)11月17日の本会議で、また参議院では同年11月23日の本会議で、難民保護への国を挙げた取り組みをうたった決議を全会一致で採択しました。その中では、「難民保護の国際法及び国際的基本理念を尊重し、日本は国際的組織や難民を支援する市民団体との連携を強化しつつ、国内における包括的な庇護制度の確立、第三国定住プログラムの更なる充実に向けて邁進する。」と明言されています。この決議は難民条約発効60周年を記念したものとして、世界でも例のない素晴らしい決議として国際社会から評価されています。
特定非営利活動法人なんみんフォーラム(FRJ)は、各会員団体がこれまで日本国内での難民支援に携わってきた経験から、認定基準なども含めて、難民保護法として法制化することが必要と考えます。そこで、「論点整理」として、1.難民認定制度の改善、2.庇護希望者の法的地位の保障、3.庇護希望者の生活保障、4.難民の社会統合、5公平な保護施策の5点を挙げました。
また、難民自身や地方自治体、NGO・NPO等の市民社会を含む、官民の連携を通じて、政策立案を進めることが重要だと考えます。
難民は、多様な文化を日本にもたらし、社会を活性化させる大切な存在です。難民保護法を制定することによって、日本の難民保護への取り組み、さらには「人間の安全保障」をはじめとする人道的な国際貢献は、世界で一層広く認められるようになるでしょう。すべての人が「ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する」ことを可能にするために、日本でも、国内で難民保護を実現する新たな法整備を望みます。
2013年(平成25年)6月20日
特定非営利活動法人 なんみんフォーラム
「難民保護法検討のための論点整理」
この法律は、日本国憲法の基本原理である基本的人権の普遍性に則り、国際協調主義に基づいて、難民の保護を行うことを目的とする。日本は、難民保護の国際法および国際的基本理念を尊重し、日本が加入する「難民の地位に関する条約」をはじめとする国際条約に基づいて難民の国際的保護および人道支援を行い、国際社会に貢献することを目指す。
1. 難民認定制度の改善
適正な難民認定が行われる制度の確立
(1) 空港をはじめとして、庇護へのアクセスを広く担保する。日本の領域にいる限りはノン・ルフールマンの原則を尊重する。
(2) 庇護申請の際には代理人へのアクセスの保障、適切な通訳人の確保、読み書きが不十分な人への配慮を行なう。通訳人については、第三者の意見も踏まえて定期的な評価を実施する。
(3) 外部の法的助言および代理人を得られる権利を法律上明記し、予算措置をする。また代理人や支援者の助言を得て申請するための十分な時間を確保する
(4) 事実の認定にあたっては、難民申請者が置かれた特異な状況を考慮し、出身国情報など客観的情報と合わせて適切に判断する。また、母語による証拠も受け付ける
(5) 保護の対象者として、難民条約上の難民に加え、拷問被害者や無国籍者、人身取引の被害者など、その他国際保護を必要とする人について法律上明記する(補完的保護)。
(6) 難民認定が適正な手続きで行われることが担保されるよう、法律の中にUNHCRのガイドラインなど国際基準を含める。
(7) すべての段階において、難民調査官などによるインタビューに代理人、補佐人などが立ち会うことを認め、難民認定の判断の前提となる資料をすべて開示し、庇護希望者に釈明の機会を与える。また処分の詳細な理由を提示する。
(8) 異議審査は、一次審査とは独立した機関が実施する。
(9) 認定に携わる人の選定基準および業務遂行に関わる事柄について公表するなど透明性を図る。
(10) 難民認定手続きを通常の出入国管理行政から切り離し、難民保護の専門性を担保する。
2. 庇護希望者の法的地位の保障
審査期間の在留にかかる法的地位の保障
(1) 難民認定申請を希望する者(「庇護希望者」)に関し、裁判およびその申請中の準備期間を含む審査期間において、法的身分(何らかの在留資格)を保障する。
(2) 庇護希望者は、原則として収容しない。収容しなければならない場合であっても、収容代替措置を適用し、予算措置も含めて制度化する。
3. 庇護希望者の生活保障
庇護希望者の生活面の課題を解消する制度・施策の実現
(1) 難民申請者の最低限の生活を保障する。在留資格の有無にかかわらず、社会保障/福祉制度の対象とする。難民申請者の子どもについては、健康と教育を保障する。
(2) 審査期間の目安を超えた場合に就労を許可する。
(3) 日本語教育、社会適応教育など、生活のための研修の機会を提供する。
4. 難民の社会統合
条約難民もしくは人道配慮に基づく在留許可者の社会統合のための制度・施策の実現
(1) 早期に社会統合が実現するよう、条約難民や人道配慮に基づく在留許可者に対して、日本語教育や職業訓練を含む支援策を提供する。
(2) 生活困窮者、および精神障害や疾病等のある生活弱者に対してはとりわけ個別・寄り添いを強化した個別支援を提供する。
(3) 家族統合に関する権利を保障し、迅速に手続きを進める。
(4) 地域における難民受け入れ促進のため、自治体や民間団体、難民による自助団体などの参加を奨励する。
5. 公平な保護施策
第三国定住難民と条約難民、人道配慮に基づく在留許可者とで、法的側面および生活面での支援策、社会統合のための制度・施策が同水準にする
(1) 第三国定住難民の受け入れを法律に明記する。
(2) 受け入れに当たっては、法的地位や支援の最低基準を定める。
(3) 条約難民および人道的配慮に基づく在留許可者について、第三国定住難民と同様の生活・社会的統合のための制度・施策を提供し、格差を生じさせないようにする。
以上
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